実話系・怖い話「横切っていく老婆」
その奇妙な家に引っ越したのは高校1年生の頃でした。
父の仕事の都合で慌てて物件を探してきたので、あまりゆっくり物件を見ている暇がなくて細かいところまでは見ていませんでした。そのためなんとなく奇妙だというところに気が付いたのは引っ越してきた後でした。
一番おかしいなと思ったのは、北側の4畳半の部屋がなぜか家の外からカギがかけられるタイプの部屋だということでした。
家の中にはお風呂やトイレ、廊下や階段などのあちこちに手すりがあり、お年寄りが住んでいたんだろうなとは家族と話していましたが、その真実がわかるのはもう少し後のことでした。
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引っ越ししてから、慣れない土地なこともあってか私たち家族はよく喧嘩をしました。
兄弟共に転校生にありがちないじめにあったり反抗期になっていたというのもありますし、父は会社での扱いで、母は地域の人間関係や知り合いのもめごとなどでゴタゴタしていたので家族的な運気が急降下していました。
そんなある日、二階にいた私の部屋に誰かが上ってくる音が聞こえました。
ギシッミシッとゆっくり一段ずつゆっくり上ってくる音に「何か用?」と声をかけてのぞくと、そこには誰もいないのです。
木が軋んだだけと母には言われましたが、それからますますはっきり聞こえるようになったのです。
そして夜中に終わらない宿題などをやっていた時、またギシッミシッと音がしました。
いつもならその音は途中で聞こえなくなるはずなのに、今回はもうあと少しで上まで階段を登りきるというところで音が止まりました。
まるで階段の途中に立ってこちらの様子をうかがっているように感じた私は、何か嫌な感じがして布団に入りました。
音はそれから何度かして聞こえなくなりましたが、その数日後に見てしまったんです。
一階の床の間の端を横切っていく、見知らぬ老婆の姿を…。
家族でその姿を目撃したのは、私だけでした。
その借家は私たちが持ち家を買って3年後に引っ越した後、一度はまた借家として利用されていましたが、その後更地にされました。
それからは未だに買い手はついていないようです。
ひょっとしたらあの老婆は、今もあの土地にいるのでしょうか…。
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