実話系・怖い話「狭い横道」
もう二十数年前のことになります。
私は新婚まもない頃で、毎朝妻と海沿いの道を歩いて通勤していました。
途中の道で別れ、妻は散歩に私は仕事に行くために駅に向かいます。
いつものように車がやっと通れるほどの狭い横道に一人それて歩き出しました。
その時に見えたのです。
自分が歩いて行く前を、顔だけが同じ間隔を保ってすべるように移動していたのです。
やや右寄りに斜め前からじっとこちらを見ています。30秒ぐらいだったのでしょうか。
すると今度は全く違う方向から声がしました。
「おい、俺の声が聞こえるか。」
振り返って見ても遠くから車が走ってくるのは見えたのですが、人はいません。
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私はいったい何が起こったのか、全くわからなくなり一時足を止めました。けれどとにかく怖くなって、いつも歩く道ではない大きな通りのほうに駆け出しました。他に人がいそうなところに出て安心したかったのだと思います。
気味が悪くてその日は、いつものように新聞を買うのも忘れて電車に乗り込みました。考えないようにしようと思ってもそのことばかりが頭に浮かんできて、嫌だったのを覚えています。
夕方の帰り道、駅前のたばこ屋の店主が、朝声を聞いた道で交通事故があったことを教えてくれました。何だか気分が悪くなりました。
今も時々、あの顔は誰か、あの声は誰か、そして車の運転手は何故接触事故を起こしたのか…つい考えてしまいます。
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